マイマイ新子南スイスでワールドプレミア


記者会見場パラッツォ・モレッティーニで質問に答える片渕監督(中央右)と鈴木プロデューサー(中央左)

 11月21日(土)から全国公開される、防府が舞台の劇場アニメ「マイマイ新子と千年の魔法」(インターナショナルタイトル:マイマイミラクル)が第62回ロカルノ国際映画祭に出品され、会場となる伊国境にほど近いスイス南部の街、ロカルノの体育館、オーディトリアムFEVIでは15日11時(現地時間)、ワールドプレミアとなる初の一般観客向けの上映が行われた。日本からは片渕須直監督と配給元、松竹の鈴木忍プロデューサーが舞台あいさつに駆けつけた。
 カジノと映画館が併設されたテアートロ・クーゼルで14日18時からプレス向け試写会の後、15日10時からパラッツォ・モレッティーニにて記者会見が開催され、片渕監督と鈴木プロデューサーは海外や日本の報道陣から質問を受けた。
 片渕監督は「女性の作家の書いた文章が大好きで、よく読む」と原作『マイマイ新子』(マガジンハウス刊)を掲げ紹介。「26の話一つ一つのどこかに死のイメージが流れている。ビクトル・エリセ(スペインの映画監督)の『ミツバチのささやき』のように、小さな女の子が死のイメージに直面するような感覚を抱いた」と魅力を語った。
 千年前を扱ったのは死と関係あるかと問われ、監督は「切り離した方がいい。千年前のものでもイマジネーションを働かせれば甦らせることができるいうことを言いたい。主人公はイマジネーションを強く働かせたが、私も同じことをしなければならなかった。大事なのはイマジネーションを働かせることで1955年に972年の風景を甦らせること」と答えた。
 鈴木プロデューサーは片渕監督について「ものすごいリサーチャーで、細部の、映画に反映されないところまで調べていた。日本アニメ界のなかでも珍しいタイプと思った」と紹介、「千年の魔法」には様々な名作映画からの引用があることも具体例を挙げて示した。
 色遣いがソフトという指摘に監督は色のバランスや、アニメには珍しく画面中のライティングに意識したことを明かし、鈴木プロデューサーは実例として「今日のデイリー(同映画祭の日刊紙)の写真を見てください」とピエール・イブ・ワルダー氏執筆の仏語記事「ル・ミラクル・アニメ・ドゥ・スナオ・カタブチ」を紹介していた。
 プレミア会場、FEVIでの舞台あいさつで片渕監督は原作者、蘯のぶ子さんについて「アニメ化を非常に好意的に受け止めてくれた。それどころか観る人に一つのメッセージを与えてくれた」と紹介し、その文章も代読した。
 16歳以下に特別価格が適用され家族向けと銘打たれたプレミアには映画人の他、子供づれが数多く来場。英語とイタリア語の字幕をつけての上映だったが、折に触れて笑い声が上がり、エンドロールでは拍手喝采が巻き起こるなど、観客から好反応を得た。
 上映後は片渕監督が会場に残った観客からの質問に直接答えた。原作との違いについて監督は「麦畑の下に千年の街があると書いているが、その風景は全く触れられていない。でも僕たちはそれが重要だと思ったので、風景の再現を試みた。千年前の少女、諾子(なぎこ)は本当に防府に住んでいるのがわかり、調べるうちに性格までわかってきた。彼女は大きくなって作家になり、本を書き残しているので私たちは千年前を知ることができる」と話し、作品に出てきた不思議な体験も「本当だと蘯さんは言っていた。子どもの頃にはそういう素晴らしい魔法が訪れることがあるのでは」と語った。最後に残った子ども達に監督がパンフレットにサインする光景も見られた。
 同映画祭では今年度、主要映画祭特集上映として過去最大規模の回顧特集「マンガインパクト」を組んで日本アニメ史上の名作を振り返り、アニメ作家として著名な高畑勲氏と富野由悠季氏へレパード・イン・オナー(名誉豹賞)を授与した。「マイマイ新子と千年の魔法」を制作したマッドハウスからは「サマーウォーズ」(細田守監督・公開中)、「レッドライン」(小池健監督・来春公開予定)も出品され、それぞれ好評を得た。
2009年08月19日(水) No.1172 (未分類)

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